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天気予報はアテにならない?登山で天気と上手く付き合うには

天気予報はアテにならない?登山で天気と上手く付き合うには

登山の予定を立てる時に天気予報を確認した経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
そして、天気予報と実際の天気が違って山頂では雨に降られてしまったという経験もあるかもしれません。
出発する日の朝に見たテレビや新聞の天気予報と山頂などの天気がなぜ違ってしまうのか、不思議に思ったことはありませんか?
それは私達が普段目にしている天気予報の仕組みが関係しているのです。
今回のコラムでは天気予報の仕組みと登山での天気との付き合い方を簡単に解説します。

1.一般的な平地の天気と山の天気の違い

一般的な平地の天気と山の天気の違い

まず、前提として現代の技術でも天気予報は100%の精度ではありません。
それでも90%は的中し、洗濯物の予定から企業の商業利用まで幅広く天気予報は私達の生活に根付いています。
そんな天気予報は主に都市部など、人がたくさん居住している場所を大まかにエリア分けし、予報として発表しています。
つまり、平地の天気予報が私達のテレビや新聞で目にしているものなのです。

一方で山の天気は複雑です。
標高や地形などの要因で予測が難しいことはもちろんですが、天気予報を見る時に厄介なのが天気予報のエリア分けです。
例えば東京都の最高峰である雲取山は、一都二県の県境にある奥秩父山塊。
見るべきは東京都多摩西部エリアか、埼玉県秩父地方エリアか、山梨県東部・富士五湖エリアか。
きっと多摩西部エリアだと思うけど……、とこんな感じになってしまいます。

チェックしたかった山の天気予報は隣のエリアだった。
外れたように感じた山の天気予報の真相はこうだったのかもしれません。

2.一般的な天気予報の区分

一般的な天気予報の区分

気象庁の天気予報は「一次細分区域」という単位で発表されています。
先程説明したエリア分けが、この「一次細分区域」です。気象特性や災害特性、地理的特性で分割されています。
北海道から沖縄までを地方で分け、その中で都道府県を府県予報区として、さらに細分化しています。
この「一次細分区域」での天気予報は大まかにエリア内の天気を知るためには大変有効です。

参考:気象庁(※外部サイトへリンクします)

3.山の天気は複雑で読み難い

山の天気は複雑で読み難い

山の天気は変わり易い。
登山をする人は誰もが聞いたことのあるフレーズです。いわゆる「戒めのための言葉」ではなく、山岳部の天気には変わり易い理由があります。
理屈は単純で、山に風がぶつかり、上昇気流に変わります。その時に空気に水蒸気が多く含まれていると雲が発生するのです。
さらに山を越えた風が下降気流となると雲は消えてしまいます。
山の複雑な地形によって上昇と下降が無数に発生し、雲か出来たり消えたりして天候が目まぐるしく変化してしまうのです。
そのため、地形の要素や風向きなど複雑に絡み合った山岳部の天気は、変わり易く読み難いと言われています。
だからこそ登山をする際には、レインジャケットなど案天候への備えが必須なのです。

4.天気の悪化に備える

天気の悪化に備える

登山をする際には天気の悪化にかならず備えるようにしましょう。
どれだけ天気予報で「晴れ」となっていてもレインジャケットは必須装備。
また、体が濡れてしまった場合に備えて着替えやタオルも持っていると安心です。
その他にも天気が悪化し、動けなくなってしまった場合にビバークするため、ツェルトを用意しておくと保険となるでしょう。
もちろん、そのような状態にならないように天気の変化には注意を払い、撤退も視野に入れて行動できることが望ましいことは言うまでもありません。

5.天気が悪化した場合のリスク

天気が悪化した場合のリスク

天気の悪化で注意すべきなのはやはり雨。
山で体を濡らした場合は夏でも環境によっては低体温症の危険があります。
実際に夏山でも低体温症が原因とみられる遭難死亡事故が発生した事例がありますので、十分に注意しましょう。
さらに「大気の状況が不安定」と予報がされていた場合は、さらに雹にも注意が必要です。
時折ニュースにもなるのでご存じの方も多いかもしれませんが、5月から7月にかけては平地でも観測されるほどです。
また、雹が降る場合には積乱雲があり、雷にも注意が必要になってきます。
落雷や雪崩のように雨に濡れて物理的に死亡することはありませんが、登山では濡れたことが遠因となって様々な問題が発生します。
低体温症によって行動不能に陥る。濡れた地面に滑って転倒して負傷する。視界不良による道迷い。まだまだ雨に濡れたことによるリスクは存在します。
登山では「濡れ」は大敵であり、天気の悪化はそのリスクを倍増されるものだと認識しましょう。

6.天気図や空の状況から天気を予測する

天気図や空の状況から天気を予測する

プロの気象予報士でなくても、公表されている天気図から大まかに天気は予測可能です。
低気圧の位置や等圧線の幅、さらに前線の位置から大まかに予測できます。
ただし地形や風向き、標高など山での天気予報は考慮すべき点が多く、変化し易いため予測が困難です。
そのため、自分で天気予報をする際には補助的なものとした方が無難でしょう。
他には雲の様子などから大まかに予測するという手段もありますが、地理的要因の影響を受け易く先人の知恵として活用するには経験が必要になります。

7.登山で利用し易い天気予報アプリ

登山で利用し易い天気予報アプリ

昨今の登山ブームから、登山に適した天気予報アプリが多数登場しました。
その中から登山者に人気があるものをいくつか紹介します。

tenki.jp登山天気
日本の気象コンサルティングサービスの走りである日本気象協会が提供している登山用天気予報アプリです。
有料サービスですが、山の麓から山頂までのルート沿いのピンポイント予報、定番の三百名山をカバー、週間天気図から高層天気図まで細かく確認できるなど多様な機能が特徴です。山のコンデションとして当日の雷、服装、紫外線の状況も確認可能です。

・てんきとくらす
日本気象株式会社が提供している無料の天気情報サイトです。
無料ながら登山に対応した天気予報で明日、明後日、週間と大まかに分かれています。
そして、大きな特徴が晴れや雨という表現ではなく、独自の「登山指数」という形で表現されていること。
山頂や山麓の気象条件などから登山に向いた天候かどうか評価しています。

・お天気ナビゲータ 登山ナビ
てんきとくらすと同じく、日本気象株式会社が提供する天気予報アプリの有料版です。
さらに登山に特化した機能として登山ルート上の天気予報や山頂10日間の天気予報、さらに雷情報等も確認可能になります。
また、登山ナビでは山をリクエストすることで予報スポットとして追加される機能もあります。

・ヤマテン
株式会社ヤマテンの天気予報アプリ、ヤマテンは全国330山の山頂予報を提供しています。
さらに主要60山は「スペシャル予報」として、より詳細な予報を行っています。
また、同じ山でも場所によって天気が異なる状況、低体温症、落雷、沢の増水といった登山でのより具体的なリスクについて情報を得ることが可能です。
登山中モードという山行に最適化された閲覧モードもあり、登山者目線の予報を提供することに力を入れています。

まとめ

登山のために天気を確認する時は、登山に特化した天気予報をサイトやアプリなどでチェックすると天気予報が外れた!という事態は少なく済むはずです。
それでも的中率は90%。
10%は外れるという前提で、必ずレインジャケットを持っていくようにしましょう。
使わずに登山を楽しめれば最高ですし、天気予報が外れて天気が崩れても怪我や遭難というリスクを軽減できます。
安全登山で帰ってくることができれば、雨降りの登山もきっと楽しい思い出になるはずです。



(品川)

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