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ビーコンの所持義務も増えている?もしものための命綱を比較します

ビーコンの所持義務も増えている?
もしものための命綱を比較します

人工的に整備されたスキー場から一歩出て、ふかふかのパウダースノーのバックカントリーを自在に滑ることは熟練のスキーヤーやスノーボーダーにとって憧れのフィールドですよね。
しかし、そのような整備されていない大自然ゆえの「遭難」や「雪崩」といった命に係わる重大なリスクが潜んでいます。
バックカントリーブームでもある近年では遭難者や雪崩事故も急増しているため、ここではそのようなリスクを回避するためのアイテム「ビーコン」について解説していきたいと思います。

1.ビーコンとは

名前だけは聞いたことある方も多いのではないでしょうか?

ビーコンとは雪崩により雪中に埋没してしまった人の捜索のために作られたトランシーバーの一種です。
万が一雪崩に巻き込まれて埋没してしまった場合でも、ビーコン信号により生存率の高い早期救助が可能になります。
位置情報を知る手段として代表的なGPS(Global Positioning System)がありますが、GPSは人工衛星から発せられる電波を用いて位置情報を把握するものに対して、ビーコンは媒体自体が発信源となります。
主な違いとしては、GPSは人工衛星ゆえに広範囲を受信できますが、建物や地下と言った電波が遮断されていると受信できなりますが、ビーコンは範囲こそ狭いものの建物や地下でも問題なく受信可能という違いがありますね。

2.ビーコンの義務化

雪崩事故や遭難の急増していることにより、バックカントリーで人気のある富山県立山では入山時にビーコンの所持が義務付けられています。また北海道ニセコでも独自ルールのもと、滑走の許されているコース外ではビーコンの所持が推奨されています。

今後もこういったビーコン所持に関するルールを設けるスキー場は増えると予想され、ビーコンの義務化は進む傾向にあります。

3.ビーコンの目的

ビーコンの使用目的は、「見つける(受信モード)」か「見つけてもらう(送信モード)」かの二種類になります。

雪崩は自然災害のため、いつどこで発生するかの予想は困難になるため、常にリスクを想定して行動する必要があります。バックカントリーでは必ず複数人のグループで入山し、万が一雪崩に巻き込まれたとしても、ビーコン信号によりグループ内での救助が可能になります。


4.ビーコンの種類

ビーコンの種類は大きく分けると2種類に分けられます。

  • アナログ式
    アナログ式はアンテナが1本内蔵されており、受信感度はデジタル式より優れ、広範囲まで受信可能です。アナログ電波は独自の曲線で発信されるため、電波の特性を理解する必要があります。

 

  • デジタル式
    デジタル式はアンテナが1本から4本のタイプがあり、アンテナの本数が多いほど精度が上がります。
    受信感度はアナログ式に劣りますが、アンテナが2本3本と多い場合、受信電波の強度を計算し、位置情報を正確に示してくれるため、不慣れな方でも比較的簡単に捜索が可能です。

 

  • アナログ、デジタル切り替え式
    受信距離が遠い場合はアナログで受信し、近くなるとデジタルに切り替えるタイプのため、アナログ式とデジタル式のいいとこ取りしたタイプです。

雪崩ビーコンが登場した当時はアナログ式が一般的ですが、近年ではデジタル式やアナログ、デジタル切り替え式が主流となり、アナログ式ほとんど出回っていません。それでもアナログとデジタルでは特性が異なるためしっかりと把握しておくことが大事ですね。


5.おすすめの選び方

ビーコンおいては受信の精度と距離がすべてと言って過言ではないので、アンテナの本数の多いものをお勧めします。
また、必須ではありませんが、おすすめできる選び方をご紹介します。

  • 表示の見やすさ
    ビーコンは屋内の明るいところで使うものばかりでなく、悪天候や暗くなってから使うことも想定しておく必要があります。
    LED表示やバックライト機能があれば悪天候や暗がりでも見やすくなるため捜索に余計な手間を省く心配もなくなります。
  • 操作のしやすさ
    多くのビーコンはグローブの上から操作できるように設計されていますが、実際に雪山でかじかんだ手でグローブ越しに操作すると思うようにいかないこともあるでしょう。実際に手に取って使い慣れておくことが大切ですね。

6.ビーコンの互換性

ビーコンに使用されている電波の周波数は、世界的に457kHzで統一されているため、メーカーの違いや機種の違いがあっても送受信可能になります。
ビーコンの種類によって送受信できなかったとしたら、万が一雪崩に巻き込まれたときに自分のビーコンの電波をグループの誰も受信できなかったら、持っている意味がなくなってしまいますしね。


7.早期救助が大切

雪崩に巻き込まれ埋没してしまった場合、15分以上経過してしまうと生存率が急激に低下してしまうと言われています。

もしビーコンを持たずに捜索する場合、雪崩によって地形が変化し、足跡などの痕跡もなく、遭難者も雪に完全に埋もれている状態で15分以内に捜索と救助はとてもじゃないですが現実的な数字ではありません。たとえ救助者のすぐ近くで遭難者が埋まっているとしても捜索は容易ではないでしょう。

ビーコンを所持していたら、ビーコン信号から即座に位置情報を割り出し、救助に取り掛かることも可能になるため、雪山でのビーコンがいかに大事かご理解いただけると思います。


8.レンタル

雪崩ビーコンの価格は2万円~6万円が一般的な相場です。雪崩に遭遇した場合に命を守るものなので高くはないといいたいところですが、これから雪山登山を始める方にとっては決して安い買い物ではないですよね。

使わないで済むのであればこしたことはないのですが、山にとってそんな経済的事情は関係ありません。

雪山が初心者には難しい理由の一つに装備に高額な費用が掛かってしまうことにもあると考えます。

そういった経済的理由を解決する目的では、本コラムである「やまどうぐレンタル屋」などでレンタルするといった手段はとても有効な手段だと思います。

通常2万円~6万円するビーコンでも3000円前後なので、日常的に雪山に登る必要がなければ私生活でビーコンを使う用途はあまりありませんのでおすすめと言えるでしょう。


まとめ

バックカントリーは魅力も多い分様々なリスクと隣り合わせになります。そういったスリルも楽しみの一つかもしれませんが、実際に事故の件数は増加傾向にあるため、できる対策は十分に整えてから大自然に挑むことが大切じゃないかなと考えます。
また、自身の命だけでなく、一緒に行動する仲間たちの命もビーコンによって救えると考えたら、もっていかない手はありませんよね。

「あぶない所へ来ると、馬から降りて歩く。これが秘伝である」
かの徳川家康の名言ですが、まさしくその通りですね。


(Shia1925)

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