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登山のパッキング。基本と方法を知って安全・快適な登山をしよう

登山のパッキング。基本と方法を知って安全・快適な登山をしよう

歩いている時にザックの中で荷物が動いてしまった経験はありませんか?
もしくはザックが肩に食い込み、痛くなってしまった経験はどうでしょう?
これらの問題はパッキングの方法を誤ることで起きることも多いのです。つまりパッキングの基本的なポイントを押さえておけば防げる問題です。 なによりもパッキングの技術は、より高く、より遠くを目指す登山には欠かせない技術でしょう。もちろん日帰りの低山域でも確実に活きる技術です。 そんなパッキングの基本と簡単にできる実践的な方法を紹介します。

1.登山のパッキングの基本

登山のパッキングの基本

 ザックを正しく背負うことは基本中の基本であり、確実に押さえるべきポイントです。
 身体にフィットさせ、荷重を肩だけでなく腰にも分散させて背負うことで、無理なく長時間の行動が可能になるのです。その上でザックの性能を十分に発揮し、快適・安全な登山のためのパッキング技術があると考えましょう。
 登山でのパッキングの基本は、

・重いものはザックの上、背中側に配置
・軽いものはザックの下、外側に配置

 以上の2点です。

ザックの重心を上に置くことによって、荷重が腰にかかり体幹へ余計な負担をかけずに済むのです。
ただし、クライミングの際にはこの原則が変わります。
・重いものはザックの下、背中側に配置
・軽いものはザックの上、外側に配置
岩稜などを踏破する場合には、重心が上にあると前後左右に振られた場合にバランスを崩し易くなってしまうからです。

2.ザックのゾーニング

適切な荷重配分をするための基本的な方法がザックのゾーニングです。
まずはザックを4分割します。単純にザックへ収納する順番に1234とします。 

 1、大きくかさばる軽いもの。テントやシュラフなど。

 2、重たくかさばるもの。背中側へ配置。食料、水、クッカーなどの調理器具類。

 3、着替えなど、少し重たくかさばるもの。

 4、休憩中などにすぐ取り出したい軽いもの。ヘッドランプや行動食など。

 以上の4種を1から順番にザックへ詰めていきます。

 さらにこれらの4種のゾーンへ収める荷物の使用優先度を確認します。
当然、ザックの上部に収納しているものが最もアクセスし易く、行動中や休憩中にさっと取り出すことができます。さらに重量などを加味し、どのゾーンに配置するのか決定します。
 例えば小休止する時にいきなりテントを組み立てたりはしませんよね? 必要なのは行動食や急な雨に対応するための雨具のはずです。
登山中の行動を想定し、最終的に自分がベストだと思える配置にしましょう。

3.登山スタイルにあったザック容量が理想

登山スタイルにあったザック容量が理想

 ここまで紹介してきたのは、登山でのパッキングの基本的な事柄です。
 ザックにも容量があり、それぞれに適した山行があります。例えば60ℓのザックで日帰り低山は大き過ぎて、中身が足りずに行動中に荷物が動いてしまうはずです。そうなると体に無用の負担がかかってしまいます。
 そんな事態を防ぐためにも、登山スタイルに合わせたザック選びも機能を十全に発揮させるための大切なポイントです。


4.持ち物を使うシーンに分けてグループを作る

持ち物を使うシーンに分けてグループを作る

 登山スタイルに合わせた適切なザックがあなたの目の前にあります。
 さて、登山には様々な装備があり、持たなくてはならない荷物があります。それらを重量だけを目安に次々とザックに詰め込んではいけません。
 まずはザックに詰める荷物を行動中、停滞(休憩)中、テント場と使うシーンに合わせてグルーブを作ります。
 使うシーンに合わせて荷物のグループを作ることで、必要なものを必要なタイミングで取り出すことができるようにザックに配置することができるのです。

5.スタッフバッグを使って小分けにする

 上記の手順で荷物のグループ分けをすると、大体のものはザックのゾーンに収めることができるはずです。
 しかし、バラバラの状態で個々の荷物を詰めていては効率よくパッキングできませんし、デッドスペースができてしまいます。そこでスタッフバッグを利用し、さらに細かく分類します。

 具体的には食べる・寝る・泊まるという分類です。
 食べるは水、食料、燃料や食器など。
 寝るはシュラフ、マットなど。
 泊まるはテントやグラウンドシート、ペグなど。

 これらをスタッフバッグに詰めると大きな塊をいくつかザックに入れるだけで、簡単にパッキングができます。行動中にザックの中で荷物が移動することを防げるだけでなく、スムーズに必要とする装備へとアクセスすることが可能です。

6.食料のパッケージ類はあらかじめ廃棄する

 長期の縦走ともなるとゴミも大量に発生することになります。
 その最大の要因が食品のパッケージです。行動食や朝・夕食など、その都度ゴミを出していてはかさばることは必至。
 最初からパッケージなどを破棄し、ジップロックなどの密閉できる袋に詰めるとパッキングし易いはずです。また、日にちごとにまとめると調理の際にも便利です。
 山のゴミは原則全て持ち帰り。このことを忘れず、事前のゴミ削減に努めることも軽量化とパッキングに役立つはずです。


7.調理器具のスタッキング

 鍋などの調理器具の中もデッドスペースにせず、収納スペースとして活用しましょう。
 ガスボンベやカラトリーだけでなく、調理器具もスタッキングを意識して揃えるとパッキングがし易くなります。
 また、行動中には使わない小型ランタンを隙間に入れるなど、ちょっとした工夫でパッキングの幅が広がるでしょう。


8.防水対策を考える

防水対策を考える

 着替えやシュラフ、防寒着など、濡らしたくないものは色々とあります。
 そんな時に役立つのが防水性能を持ったスタッフバッグです。防水性能がないものに比べると少々割高に感じるでしょうが、それだけの価値があるものです。
 例えば、あなたが雨に降られ、テント場に辿り着いたとします。その時に乾いた暖かい着替えを使えるか。それは肉体的・精神的な回復に影響するでしょうし、翌日のパフォーマンスにも関係するでしょう。
 昨今の登山に必須となったバッテリー類も高耐久モデルでもない限り、水濡れは避けた方が無難です。
 また、バッテリー等の小物はジップロックなど密閉できる袋に入れるだけでも防水への安心感が違いますので、ぜひ試してみてください。


9.ザックの機能を活かそう

ザックの機能を活かそう

 ザックには収納のために様々な機能が付与されている場合があります。代表的なものでは雪山用のショベルのコンパートメントなどです。
 しかし、そういった特別なものではなくても、コンプレッションベルトなどが備わっているモデルも多く存在します。そういった機能を活用すれば、少ない荷物でもすっきりとまとめられ、荷重の偏りを解消できます。
 また、ザックには水筒やトレッキングポールなどを収納できるサイドポケットが備わっています。サイドポケットには歩きながらアクセスしたいものを収納し、テントのポールなどはなるべくメインの気室にしまう方が無難です。
 なぜなら、木の枝などに引っかけてスタッフバッグを破損するだけでなく、紛失などのトラブルの原因になる場合があるからです。


10.サコッシュを使って身体の前面も利用する

サコッシュを使って身体の前面も利用する

 サコッシュなどを使い、身体の全面を利用するのもパッキングのテクニックのひとつです。頻繁に使用する地図やコンパス、カメラなどはこちらに収納するとかなり便利です。
 個人的にはスマートホンなどを収納すると、パンツのポケットに入れるよりも煩わしさがなく、ザックに仕舞い込むよりもずっとストレスフリーな状態で使用できました。
 昨今は地図アプリを利用する方も増えたので、ザックの中に仕舞い込むよりはずっと活用し易いはずです。

まとめ

 パッキングは難しいものではなく、ポイントを押さえればすぐにでも実践できるものです。 
 そして、より高くより遠く、そして長く行動するためには必須のテクニックであり、なによりも自由に行動するためのものです。
 ザックが肩に食い込んで痛い。荷物が動いてバランスを崩してしまう。
 そんな方はぜひ、パッキングを見直し、安全・快適な登山を楽しんでください。


(品川)

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