富士登山向けセット
初めての富士山登山。どれぐらい時間がかかる?日帰りもできるの?
日本最高峰の富士山の標高は3,776m。
成人の平均的な歩行速度は4~5km/hですので、一時間程度で登れてしまいそうな雰囲気です。
しかも殆どの方が五合目からスタートしているため、もっと楽に登頂できると誤解されがちです。
また、SNSなどでは日帰りでの富士山登頂達成を報告するものもあり、「もしかして日帰りも可能かも?」と考える方もいるのではないでしょうか。
今回のコラムでは富士山登頂に初挑戦する初心者へ向けて、日帰りは可能なのか、どれぐらいの時間が必要なのか、そして宿泊の場合にはどうすればよいのかということに焦点を絞って解説します。
目次
富士登山オフィシャルサイトでは最短ルートで登山に5時間、下山に3時間としています。
ただし、これは休憩時間を含まず、また普段から鍛えている方が、何の問題もなくスムーズに行動できた場合の時間だと考える方が無難です。
初心者の大まかな行動時間は6~7時間程度で、これもまた休憩時間は含みません。
さらに富士山は世界遺産として登録されている人気があるため、国内外から多くの登山者が集まり、渋滞が発生することもしばしばで特にご来光を見るための渋滞は有名です。
初心者が適度な休憩を取りつつ疲労を過度に蓄積しない登山を行うなら、登頂全体での時間は大まかに8時間程度と見積もる必要があるでしょう。
結論から述べると富士山への日帰り登山は可能です。
ただし、登山初心者の日帰り登山はおすすめできません。
富士登山オフィシャルサイトでは日帰り登山を「弾丸登山」と呼び、非推奨としています。
その理由として高山病、夜間登山の危険性などを挙げ、多くの初心者が高山病や事故などで登頂を断念していると注意を呼び掛けているのです。
しかし、中にはSNSなどで日帰り登山を報告している方も少なからず存在します。
そういった方達は基本的に、
などの理由が推察できます。
しっかりと経験と知識を持った熟練者が日帰り登山を行った場合と、初心者の場合ではリスクに差があり過ぎるのです。
なにより、登山は基本的に誰かとスピードを競う競技ではありません。
しっかりと余裕のある行程で、周囲の景色を楽しむぐらいの余裕を持った方が楽しいのではないでしょうか。
富士山の日帰り登山が非推奨な理由
富士登山オフィシャルサイト
弾丸登山など登山行程に関するページ
せっかくの富士登山が怪我や事故、高山病などで苦しい思いをしただけ……。
そんなことになってしまわないよう、ゆとりある登山計画を立てましょう。
前述しましたが、初心者の日帰り富士登山は非推奨!
山小屋での1泊、あるいは日程に余裕を持って2泊がおすすめです。
では、時間をかけて行う富士登山にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからはゆとりある登山計画のメリット、そして富士山での宿泊方法と注意点を解説します。
山小屋泊のメリットは、なんといっても安心感です。
富士山は普段、私達が生活している街と違い、紫外線や風が強く、さらに天候が急変することもあります。
そんな厳しい富士山の環境から守ってくれ、安心して眠れるというのは何ものにも代え難いメリットです。
また、しっかり管理された山小屋は水場のない富士山で飲料水を購入できる唯一の場所です。
さらに夕食や朝食といった簡単な料理を提供してくれる場合もあります。
飲料水と食料の全てを山小屋での購入に頼ることはできませんが、補給をある程度できる点も初心者には嬉しい所です。
確実に利用したいのならルート上にあるに小屋に予約をしておく方が無難ですが、週末やお盆などの連休には非常に混み合うため、予約が取れないこともあります。
また、夜間には入れない山小屋もあり、混んでいない時期でも利用できない場合もあるので、登山の前にしっかりと利用可能時間などを下調べしましょう。
天候が崩れた際に雨宿りもできず、休憩のみという利用もできない点も注意が必要です。
そして、富士山では水は貴重品。
洗面所や手洗い用の水道、お風呂はありません。
汗をかいた体を拭くためのボディシートやドライシャンプーがあるとさっぱりしますが、ゴミはきちんと持ち帰りましょう!
繁忙期の山小屋は殆どの場合で男女相部屋となる点にも要注意です。
現在はある程度の配慮を管理人さんがしてくれるかもしれませんが、かつては繁忙期の小屋内が酸欠になるぐらいぎゅうぎゅう詰めだったという話もちらほら……。
そして、キャッシュレス化が進む街中とは違い、殆どの山小屋での支払いは厳禁オンリーということをお忘れなく!
お札だけでなく、小銭も用意しておくと良いでしょう。
初心者の安全登山の要にもなり得る山小屋。
頼り過ぎることは良くありませんが、上手く利用して山頂を目指してください。
富士山の五合目より上は国立公園特別保護地区に指定されています。
そのため、動植物の採取、石なども持ち帰りや移動、落書き、ペット等の放し飼い(ペット連れの登山)などは禁止行為です。
そして、テントの設営も禁止行為です!
だからこそ富士登山での宿泊は山小屋泊一択となり、利用者が集中しています。
登山道から外れ、隠れてテント泊を行うのは違反行為というだけでなく、大変危険ですので絶対に行わないでください。
富士山には4つの登山道があり、それぞれの特徴を簡単に説明します。
最初に各ルートの登山口の標高と、登山・下山の大まかな時間を紹介し、その他の特徴や山小屋に関しては個別に紹介します。
※データは「富士登山オフィシャルサイト」より引用
富士山の登頂を目指す方の大半が吉田ルートを利用していて、登山道に多くの山小屋があります。
そのため混雑することも多く、特に須走ルートと合流する八合目以上で顕著になります。
六合目以降は日陰がないだけでなく、花小屋という山小屋以降には岩場を登ることになるので、転倒や捻挫に要注意。
七合目からはさらに岩場が急になることに加え、ご来光を目指す夜間登山者による渋滞が有名です。
救護所もあるので体調不良の際には立ち寄ると良いでしょう。
夜間の登山はより一層の注意が必要ですが、3,000mを超えたことで高山病にも気を配り小まめな水分補給と休憩、深呼吸を意識して行いましょう。
下山道は登山道と完全に分かれているため、道を外れないように標識をしっかりと確認してください。
また、下山道には山小屋がないため、万が一の逃げ場は避難小屋しかないこと、さらにトイレは七合目までないことを覚えておきましょう。
広く緩い樹林帯を七合目付近まで歩く須走ルートは、他ルートよりも比較的日差しから目や肌を守ることができます。
ただし、見通しが悪い樹林帯は暗い時間帯だけでなく、雨や霧などの天候不良の際には道迷いに注意しましょう。
八合目からは吉田ルートと合流して登山道の混雑が始まりますが、自分のペースをできるだけ維持し、こまめな水分補給で高山病をできるだけ防ぐことを意識してください。
山小屋が各合目にありますが、救護所がないので体調管理には注意が必要です。
下山道が登山道と分かれており、さらに八合目までは吉田ルートと共有している点に注意が必要です。
しっかりと標識を確認し、予定した登山口に到着できるようにしてください。
七合目から砂走りという砂利道を一直線に下るため、スパッツなどを装着して細かい砂利が登山靴の中に入らないようにすると快適です。
吉田ルートに次いで利用者が多い、富士宮ルート。
最も高い標高が高い地点からのスタートのため、山頂までの距離が短いというメリットがあります。
ただし、ルートは傾斜がきつく、岩場も他の登山道に比べて比較的多いだけでなく、登山道と下山道が同じです。
そのため登山道が混み合った際には譲り合いが大切です。
登山は原則として「登り優先」ですが、狭い岩場ではお互いの気遣いが大切です。
急がず、急がせずの精神で焦らず行動しましょう。
山小屋は各合目ごとにあり、富士宮ルートでは「山室」と呼びます。
また、五合目のレストハウスが火災で使用できないため、トイレ、売店、展望エリアには立ち入りできません。
富士宮ルートの登山口に来る前に買い物などは済ませた方が無難です。
宝永山遊歩道を経由して御殿場ルートへ抜ける通称プリンスルートは、山頂を一周する富士山の雄大さを感じられる素晴らしいルートです。
しかし、天候や体力などを加味し、余裕がある時に歩くことをおすすめします。
御殿場ルートは健脚向きのロングルートで、さらに山小屋も少ないだけでなく、救護所も設置されていません。
そのため、利用者は他のルートに比べて少ないですが、反面目標物が少ない夜間、霧が出た際には道迷いが起きやすい環境です。
五合目にある登山口には山小屋がなく、10分程度登った地点にあります。
その他の山小屋同士の間が空いているため、到着時刻には余裕を持った出発が無難です。
長い距離を歩くコースで、植生が乏しいため熱中症には特に注意が必要です。
小まめな水分補給と休憩を取りましょう。
御殿場ルートは登山道と下山道が分かれています。
下山道の六合目の宝永火山から富士宮ルートへの分岐を過ぎると大砂走りですが、この付近は濃霧が発生し易く分岐を見落としやすいので注意が必要です。
4つの富士登山ルートの中で唯一マイカー規制が行われていないため、富士山スカイラインから自家用車で向かうことが可能です。
富士山を登るためには、装備・知識・体力が必要です。
それらを揃えることである程度は富士山登頂を楽しく、快適に目指せるでしょう。
しかし、富士山は非常に人気があり、日本国内だけでなく国外からの観光登山も行われています。
どれだけ自分のペースを維持して登りたくても渋滞に巻き込まれてしまえば、それも叶いません。
混雑が予想されるのが、週末と祝日、そしてお盆の連休!
特にご来光を一目見ようとする登山者の列で日の出前の八合目以降は、ヘッドランプの灯りが山頂まで延々と繋がっている光景を見ることができます。
最も込み合う吉田ルートでは日中の二倍程度の時間が必要になるため、「夜間に並びながら登山する覚悟が必要」と富士登山オフィシャルサイトに明記されてしまうほどです。
「山頂で絶対にご来光を見たい!
」という方以外は、ご来光を見ることができる山小屋に宿泊する、ご来光渋滞が解消された後に山頂を目指すといった方法で混雑に巻き込まれずに済みます。
どうしても自分のペースで登りたい、渋滞を回避してご来光を見たい、という方は登山者が比較的少ない平日が狙い目です。
富士登山オフィシャルサイトが富士登山混雑予想カレンダーを公開しているので、混雑を回避した分散登山を計画しているなら、ぜひ参考にしてください。
富士登山オフィシャルサイト
安全・リスク情報/混雑を回避する
富士山の登頂は登山を趣味とする人の目標のひとつであったり、初心者が登山を始めるきっかけにもなったりする素晴らしい体験です。
つらい思い出にしてしまわないためにも、しっかりした準備を行い、無謀な登山計画ではなく余裕を持ったものにすることをおすすめします。
そのためにも、きちんとした装備を揃えること、体力の拡充と分散登山、そしてゆったりと山小屋泊を楽しむ余裕を忘れずに!